脚本協力しました


夏野が振付・出演した
ダンスパフォーマンス公演に
朗読用の台本を提供しました。


公演も無事に終わったので
折角だし公開しようと思います。

「ロンドン橋をテーマにした
ダンスをしたいから、そのダンス前に
ロンドン橋についての朗読を行いたい」
とのことで書きました。



ロンドン橋
これは、イギリスのテムズ川にかかる、ある橋の物語。
 その橋は、西暦46年、今から2000年近く前の頃から、同じ場所にかかっていた。
 その橋は、戦争や災害で、幾度となく崩落し、その度に人々は、材料を変えて、橋をかけ直していた。
 ある時は、粘土と木で橋を作った。しかしその橋は流されてしまった。またある時は、レンガとモルタルで橋を作った。しかしその橋は崩れてしまった。またある時は、鉄と鋼で橋を作った。しかしその橋は曲がってしまった。またある時は、金と銀で橋を作った。しかしその橋は盗まれてしまった。
 あまりに何度も崩れるから、人々はこれを川の神の怒りと考えた。そこで人々は、穢れない若い女を1人選び、それを生贄として、神に捧げることにした。
 ほどなくして、1人の女が選ばれた。穢れない無垢なその女は、自らに課せられた使命を嘆き、来る日来る日も、その運命を恨んだ。やがて女は観念し、人柱として、生きたまま橋に埋められた。
 それからというもの、橋が崩れることはなくなった。人々はその奇跡に歓喜し、そして自らが下した決断から目を背けた。人々は人柱という言葉を嫌い、見張りという言葉を用いた。あの女は見張り役として橋にいる、そう思い込むことにした。有名なロンドン橋の物語である。
 それから数百年、その女の話をする者はいなくなった。しかし、その女は覚えている。人々が自らに課した愚行を。今も橋の下で、橋を行き交う人々を眺めている。私は決して忘れない。彼らが私にしたことを。



実際に公演を行なったときは
一部台詞をカットしたそうですが
僕は最初こんなものを書きました。

「人柱のところをおどろおどろしく」
との注文があったので
どーしよーかなーと考えてたら、
朗読を行うのが女子と聴いて
このオチが思い付きました。

このアイデアが浮かんだとき
(お風呂で湯船に浸かってました)は
「やったー!」と思いました。

あと、頼まれたものの使われなかった
作品全体のテーマである「世界市民」
ついての語りも、折角なので公開します。



世界市民
2022年2月24日、ロシア軍が、隣国ウクライナに侵攻した。日に日に戦闘は激化し、ウクライナ側の民間人犠牲者は、累計で1万人を超えた。
 こうしたニュースを耳にするたび、私の心は締め付けられる。
 どうして世界から、戦争はなくならないのだろう。過去の2度の世界大戦を経て、人類は化学兵器と核兵器の恐ろしさを目の当たりにした。それにも関わらず、人々は戦争をやめようとはしない。
 もし世界から国という単位がなくなり、国境がなくなったら、国家間の戦争はなくなるかもしれない。
 もし世界から様々な言語がなくなり、共通の言葉を話し始めたら、人類はもっと言葉を通して分かり合えるかもしれない。
 もし世界から国民という括りがなくなり、世界中の人々が世界市民になったら、様々な民族紛争はなくなるかもしれない。
 もしこれら全てが実現し、世界から戦争がなくなったら……しかし、戦闘は今なお続いている。



だいぶ前に書いたものなので
情報が古いですが
こんなものを書きました。

脚本というか台詞というか
を書くのは久しぶり(2年半ぶり?)
だったので、結構楽しかったです。

また何か書きたいなと思いました。

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